鑑賞会ニュース73号(平成30年10月21日発行)

あの暑くて仕方のなかった日々はどこへ行ってしまったのでしょうか…。

秋も深まり、少しずつ次の季節の気配も感じられる今日この頃。如何お過ごしでしょうか。

長い夜のひとときに、今回もにぎやかな鑑定会ニュースをお届け致します。


1.日本刀講話会と鑑賞会@川崎町(9月22日)

今年も川崎町公民館にて日本刀の啓蒙活動を実施。

参加者は総勢31名。

 

日本刀のことを広く伝えたい…! という気持ちを胸に、

午前の講話会は『文化の象徴、日本刀』と題して

当協会の鈴木会長より

日本刀が身近な存在であることをご紹介致しました。

 

午後は同会場の和室にて

高山武士先生に名刀をご持参頂き、鑑賞会を開催。

初めての方もベテランの方も同じ眼福の時間を共有し、

楽しい一日はあっという間に過ぎていきました。 

 

地元の方ももちろん、

山形からお越しの方もおられたようです。

 

参加された皆様、大変お疲れ様でした!

鑑賞刀のレポートは次項を参照ください。


2.鑑賞刀レポート

【一号刀】太刀 古備前「正恒」2尺3寸~2尺4寸程 備前国 平安後期

鎬造り、庵棟、元先幅差に開きあり腰反り深く先へ行って伏しごころ。小鋒。細身の優しい姿。

帽子の形状は不鮮明でわからず。

 

地鉄は地沸がつき地景が入った板目がよくつんで整い、ハバキよりやや上に所々如麟杢状の地景が入り、

刀身の鎬地あたりに淡く映りが立つ。

 

刃文は焼幅は狭く、足、葉が入り、下半が小丁子風の乱れ、上半は小互の目と丁子風の乱れ、

総体的に小沸出来の小乱れとなる。茎は磨り上げられているがハバキを取ってみると

棟区(むねまち)と刃区(はまち)が健全な状態で残されている。

鑢目は槌目状のものがややつき、茎尻は切。

目釘孔2、第二孔より下、佩き表刃寄り茎尻付付近に「正恒」の二文字。

 

時代の上った備前物は粘り気のある地鉄が多い、または大肌が交ったり肌立っているというイメージを持っていましたが、これは鎌倉時代に入ってからのものだと復習で理解しました。

当日は、正恒の地沸のついたよく詰んだ地鉄があまりにも美しく、作刀地域を山城と見てしまいました。

古備前は映りがあまり立たないと聞いていたので、映りがはっきり見える作もあるとわかったのは収穫でした。

…あらためて振り返ってみれば、淡いとはいえ鮮やかな映りが見えるのなら…備前とみて然るべきだったと思います。(佐々木理恵 記)


【二号刀】太刀 金象嵌銘「古伯耆 大原真守」2尺3~2尺4寸程 伯耆国 平安後期

 鎬造り、庵棟、身幅重ね尋常、腰反り深く先にもやや反り付き棒樋掻き通す。

大摺り上げ、薫山先生の金象嵌極め。平安後期から鎌倉初期は古備前に代表される腰反り高く先が伏さる、

または俯き加減と表現される体配が一般的時代認識だがこの「大原真守」や古伯耆物は安綱においてもやや先反り感があり地方色が出ている。

 

 地鉄も古伯耆特有の黒味を感じさせ、地斑を交え板目がやや肌立ち気味みだが綺麗にまとまっている。

小切先ではあるがやや伸びた帽子。小丸気味みに掃き掛けが入り刃幅もあり健全性、強さがある。

 刃文は小乱れに小丁子で低めに湾れる。古伯耆の特徴として刃は小錵出来で金筋、砂流し入り焼きの強さがある。古調また古雅味と表現される通り実際の刃文はぱっと見の匂い口、また刃文自体「沈む」「うるむ」「眠い」「滲む」などどう違うのか?という個人的に最近の疑問であったタイプの刃。また「押し形に描く際どう表現するのか?」と考えていて、また見たかったタイプの刃。鑑賞会帰りベテラン会員の方に古調とは?との話で「やはり古調とは柔らかく見えるとも締まりや強さがあり、タダ弱く見える刃とは一線を画す品格がある」とお聞きして成程と感じました。常に最上ランクを見慣れている方であれば姿の時点でそれは当たり前の見当を付けるものと思います。

 

 この点は高山先生の掲題として用意された一号刀の古備前の「正恒」との比較にて良く理解してほしい課題だったそうです。

 姿の違い、地鉄の色味、刃中の強さ。それぞれの特徴を今回を通して差異を認識する。特に一号刀は自分の記憶では三度目です。しかし回数ではなく観察時間も合わせても30分(本来機会が許すなら何時間でも観察したい御刀)も見ていない事からすると改めての発見と更に比較して流派の違いをしっかり認識できたのは収穫でした。狙い通りと言う事だと思います。

 

 一つ疑問点があり棒樋が掻き通しでありますが大摺り上げの場合、中心仕立ての為に磨り上げた後、削る作業を減らす為に片方は掻き通しのままでまた片方は中心を曲げて中心先に向け削りますから掻き流しの様になり表裏が変わるはずです。しかし本刀は表裏がしっかり自然に掻き通しのまま大摺り上げとなっていました。樋の深さの違和感もなくしっかり両側から良く見たのですが、均等に削ったのであろうか?

大摺り上げの仕立て直しも刀身全体の姿を思い施した丁寧さであるのか。

自然さが逆に違和感や謎(単なる知識不足か)を感じる御刀でした。

(三浦弘貴 記)



【三号刀】剣 「国吉」 7寸程 山城国 鎌倉中期

 両鎬造り、鍛えは板目に杢目交じり所々流れ、地景頻りに入る。

刃文は直刃調に小互の目、小湾れとなり食違刃交じり、小沸つく。彫物は鎬に細い樋を彫り梵字となる。

 

 粟田口国吉は同派の則国の子と伝えられています。多くの作刀に彫刻が見受けられ、太刀などの作例は少なく短刀を多く作刀しました。また同じく短刀を得意とする藤四郎吉光は年紀作が確認されていないため、国吉の子や同門または弟子など諸説ありますが、作風の類似性などからいずれかの密接した関係であったとされています。

(今野利幸 記)


【四号刀】太刀 折返銘「備州国分寺住助国作」 2尺3寸8分 備後国 鎌倉末期

  地斑風の映りがうっすらと表れ 、精美な印象の残る折返銘で重要美術品の国分寺助国の太刀。

  刃文は直刃調で乱れが交じり 、丁子と互の目が逆掛かった出来から備前であれば雲次や雲生などの雲類へと持っていきたくなるが、帽子が小丸へと返っているので帽子が大丸ごころとなる雲類へと極めるにはやや難しいところである。

 

  備後国の刀工と言えば南北朝時代に栄えた古三原が思い浮かぶところ であるが、助国はその古三原よりも時代の上がる鎌倉末期の刀工である。一説では三原鍛冶 の祖とも云われており、備後国の刀工の中では最も古い時代の刀工であると考えられている 

 

  助国は銘に備州住と切ることから備前国に住んでいたのか、また備後国に住んでいたのかな ど色々な説があるが、元来は備前を拠点とした刀工の一派が山陽道沿いに進んで備後国分寺 付近に定着したという可能性がある。

そしてその中で近隣の刀工の影響を受けて大和伝の作 風を取り入れたのだろうか、助国の作風は大和伝風の作と備前気質の作風の両方に分かれて いる。また銘や作風から、助国は初代、二代がいたのではないかと考えられる。

今作は雲類、または真長等に近い備前気質の作風であるが、直刃調の乱れた刃文等から、特に山城伝の作風のようにも感じさせられる太刀であった。

 

  助国と入札するのは困難であるの で先ず体配から時代を鎌倉末期と捉え、その時代の中で作風の近い刀工を考慮する見方が良い方向性であり、また良い刀、素晴らしい刀として今作をしっかりと見て取ることが大切であるとのお話があった。 

 

 なお国分寺助国は重要美術品としては二振りの登録があるが、今作の助国はその二振りの内 の一振りである。

(赤荻亨 記) 



【五号刀】脇差 「越中守正俊」 1尺2~3寸程 山城国 江戸初期

鋒が大きく伸びた慶長頃や幕末の刀に見える姿、鎬は高くなっており指し裏に二筋樋と指し表に三鈷柄剣の彫り物がある。

 

地鉄板目がやや肌立ち刃寄りが流れている。刃文は互の目乱れに尖り刃飛び焼きや砂流し入る。

帽子乱れ込み小さく丸く返る。

 

姿から慶長新刀と新々刀で迷いましたが肌立った地鉄や派手な刃文から出羽大掾国路に入札しました。国路はその作風から三品派と深い繋がりがあったのではないかと言われておりその中でも越中守正俊とは区別がつかないほど似ている作品もあり入札鑑定では同然扱いになることもあります。

(國上涼 記)

4.鑑賞刀レポート補足資料

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5.今後の予定

6.会員通信

本ニュースの編集・配信・お菓子係のササキです。

 

 

…鑑賞会の度に困ることがあるのです。

 

御刀を鑑賞する折、気づいた点をメモで残す方もおられると思うのですが、

メモにどんな工夫をされていますか?

 

ササキは「鍛え肌が良ければすべて良し!」と思うほど鍛え肌を観るのが好きなのですが、

ついウットリと見入っているうちに、刀姿や刃文、帽子や茎の形といった御刀を学ぶ上で

最低限観るべきところ(観点)が散漫になってしまいます。

観点に抜け漏れがあるものだから、すべての鑑賞刀の観点が一律に揃うことはなく、

復習はもちろん鑑賞刀レポートを書く時になって初めて観ていなかったと気付くこともしばしばです。

 

鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス・・・は全く関係ありませんが、

観点に抜け漏れができるならできないような工夫をしてみよう!

…というわけで、御刀に見入っても最低限必要な観点だけは掴めるようにササキ用メモ帳、作りました。

 

メモ帳のコンセプトは「とりあえず走り書きしとけ!」(笑)

鑑賞会のたびにアタマがパンクしそうになるササキにとって、丁寧できれいなメモを残すなんてことは無理なので(笑)

 

この種のメモ帳、過去にも何度か作ったことがあるのですが、

当時は文字ばかり配置していて、文字そのものの意味を思い出すのに時間を費やし、

貴重な鑑賞の時間が減ってしまうこともありました。

 

そこで今回は刀剣の輪郭をなぞった画像も載せて、

目で観点を見ることで無駄な時間を費やさないよう工夫してみました。

観点の抜け漏れも防ぐ目的もあります。

宮刀保に所属するようになってから、画像編集ソフトの使い方が格段に上手くなりました(笑)

…ええ、ぜひ鑑定眼も上達したいところですね(^-^;)

 

今回の鑑賞会で使ってみたところ、効果はまずまず。

予め狙った観点は拾えることがわかりました♪

 

御刀に魅入りつつも観点もしっかり掴められることが理想ですが、

初心者マーク付きのササキにとって、まず観る習慣をつけるよう努めていくことが第一歩だと思っています。

 

皆様は、メモにどんな工夫をされていますか?

機会ありましたらメモを見せて頂けたら嬉しいです(^-^)

ぜひ参考にさせて頂きます♪

 


 『第二回 日本刀講話会と鑑賞会」@川崎町、大変お疲れ様でした!

講話会も鑑賞会も無事に終了! よかった~~。

本イベントの準備とPRをして下さった川崎町役場の皆様、

ならびに小雨の降る肌寒い天候にも関わらずお越しくださった皆様、

会場の設営、司会進行にあたられた宮刀保会員の皆様に心より御礼申し上げます。

広報チームの皆さんもお疲れぃーーーっす!( ← 雑…っ)

 

ちなみに今回は地元の方はもちろんのこと、

遠路はるばる県外…山形県よりお越し頂いた方もおられたのです♪

しっかりご挨拶できなかったことが心残り…ご縁あればまたお目に掛かれたら嬉しいです。

 

広報チームは今回もいろいろやりました!

午後からの鑑賞会では初めての方々に模擬刀を使った取り扱い方法や礼法のレクチャーはもちろん、

日本刀の歴史や刀や刀装具の各部名称などの基礎知識が満載のデータを入れたノートパソコンを設置し、

ご来場の方々が自由に閲覧できるようにするという初の試みもありました。

視覚的に地鉄や刃文の種類を理解しただけでも、

初めて参加された方々の目の輝きが違うというか…より興味をもって御刀を鑑賞されているように感じました。

鑑賞会の最期あたりは刀剣談義で楽しくお話できちゃいましたし

(騒がしくてすみませんでした…)・

これらのデータは、インターネットで愛刀家を増やす啓蒙活動をなさっておられる『刀剣インターネットコミュニティー(刀ネコ)』様よりお譲り頂いたものです。

(」゚◇゚)」< 刀ネコ様~っ!すんごい効果がありました~っ!

(」゚◇゚)」< ありがとうございました~~っ!

 

御刀ごとの違いを見抜き、ただひとりの作者を見極めることも素敵だけれど、

 

「取り扱い方法を覚えた!」

「安全に観られて刀って綺麗だなって思った!」

「また観てみたいなって思った!」

 

…ご来場頂いた方より、笑顔で頂いた感想です。

まずはそのお気持ちをなによりも大事になさって欲しいですし、そこからが日本刀の世界への第一歩だと思います。

…ちょっとエラそうなこと言っちゃってますかねササキ(^-^;)

 

次回は11月、宮刀保水入らずの宿泊鑑賞会@秋保温泉♪

どんな御刀にめぐり会えるかな~。

温泉も楽しみ。お喋りも♪

 

一般の方は年明け1月の新春名刀鑑賞会にてお目に掛かれましたら嬉しいです。

御刀の取り扱い方や礼法のレクチャーはもちろん、パソコンも設置します。

1月の鑑賞会への参加を希望される方は専用フォームよりお申込みくださいませ♪

 

寒さがぐぐっと強まってきていますので、風邪など召されないよう十分お気をつけください。

ではではっ、会員通信でしたっ(^▽^)ノ